【節税の本質】リピーター戦略と節税は同じ場所にある

中小企業経営者の皆さまへ。

「頑張って売上を上げているのに、なぜかお金が残らない……」そんな疑問や不安を感じたことはありませんか?
私のもとにも、決算を終えたタイミングで「今年も頑張ったのに、結局手元に残ったのはこれだけか……」と肩を落とす社長が数多く相談にいらっしゃいます。

本日は、税理士の立場から「お金を残す経営とは何か」、そしてその裏側にある「節税」と「リピーター戦略」の意外な共通点について、じっくり解説していきます。

目次

売上よりも「利益を残す構造」を優先

多くの経営者は、売上が上がれば自然とお金が残ると思いがちです。しかし現実は違います。売上を上げれば上げるほど、仕入れ・人件費・広告費などのコストも比例して増加し、結果として「利益が薄くなる」ケースがよく見られます。

この状況を打開する鍵は、リピーターを前提とした利益構造を築くことです。初回取引で終わってしまう顧客を追い続けていては、常に新規集客のための出費が発生し、体力を削る一方となります。

重要なのは、「このお客様とは、今後も取引を継続できる可能性が高いか?」を判断したうえで集客に投資することです。つまり、未来の収益が読める顧客を選別する視点が欠かせません。

リピーターになって頂ける新規顧客を開拓する

売上だけを追い求めて新規顧客を集めると、「イベント目当て」「割引目当て」など、価格やキャンペーンにしか興味のないお客様ばかりになります。これは言い換えれば、「短命な顧客を育てている」状態です。

一方で、たとえ来店や契約の数は少なくとも、価値を理解し、再購入・継続契約の可能性が高いお客様に焦点を当てた新規開拓をすることで、将来の利益は安定し、税金対策も見通しを持って行えるようになります。

節税の基本は、「利益が出ることを前提に戦略を立てる」こと。見込みの立たない売上に依存していては、節税どころか、資金ショートのリスクさえ生まれてしまいます。

初回取引の印象が、その後の収益性を決める

リピーターになるかどうかを分ける最大のポイントは「初回取引の体験」です。特に中小企業の場合、初回の印象が「他と変わらない」ものであれば、お客様は次に価格や条件で比較し、より安い選択肢に流れてしまいます。

その結果、単発の売上はあるものの、利益を伴わない「薄利多売型の経営」に陥ります。利益が出ない以上、節税も難しく、どれだけ売っても現金が貯まらない構造が続くのです。

ですから、初回の接点では価格よりも体験価値・接客・ストーリーといった「感情に訴える要素」を重視し、「この店に任せたい」「この会社なら安心」と感じてもらう仕掛けが必要です。こうした体験を提供できれば、価格競争に巻き込まれることなく、高単価でも継続して購入してくれる顧客が生まれます。

そしてこの構造ができれば、余計な値引きや広告費を削減でき、利益率が改善。税引後に手元に残るお金も増えていきます。

「お客様の数」を減らす発想が利益と節税を救う

「売上を増やすには、できるだけ多くのお客様に来てもらうことだ」と思っている方も多いかもしれません。ですが、その発想が経営を苦しめている可能性があります。

一度立ち止まって考えてみてください。

  • 多くのお客様に対応するために、追加の人員を雇っていませんか?
  • 配送量が増え、物流費や在庫リスクが膨らんでいませんか?
  • 問い合わせ対応に追われ、本来やるべき改善や営業ができていないのではありませんか?

これらはすべて「固定費の増加」につながります。そして固定費が増えれば増えるほど、利益が出にくくなり、節税の手段も限られてきます。

一方で、本当に価値を理解し、繰り返し購入してくれるお客様に集中することができれば、少人数でも運営可能なスリムな体制を築くことができます。その結果、固定費が抑えられ、利益率が上昇。健全なキャッシュフローが生まれます。

これはまさに「質の経営」です。顧客の数を追うのではなく、「関係性の深い顧客」にフォーカスすることで、節税効果も最大化されていくのです。

利益が出たら、健全な節税戦略を設計する

「税金はできるだけ払いたくない」――経営者であれば誰しもそう考えるでしょう。しかし、税金を減らすことを目的にしてしまうと、経営は必ずおかしくなります。

例えば、

  • 不必要な設備投資をして減価償却を作る
  • 利益を減らすために過剰な保険契約をする
  • 法人で購入した資産が実は社長個人のもので税務リスクに発展

といった「目的と手段の逆転」が多発します。

ここで大事なのは、「払ってよい税金」と「抑えるべき税金」の仕分けです。
全てを削るのではなく、未来への投資を意識しながら、適切に利益を残し、節税する。これが最も堅実で持続的なお金の残し方です。

たとえば、

  • 役員報酬と利益の配分を適切に設計する
  • 小規模企業共済やiDeCoで将来の個人資産形成を図る
  • 中小企業投資促進税制の活用で、計画的な設備更新

など、事前準備と計画的な対策があれば、税金を必要以上に払いすぎることなく、キャッシュを残すことができます。

数字をコントロールする力こそ経営者の武器

最終的に、経営者が身につけるべきスキルは「売上を増やす力」だけではありません。

  • 利益を残す仕組みを設計する力
  • 数字を読み解き、未来を予測する力
  • 固定費と変動費のバランスを取る力
  • お金の出入りをコントロールする力

これらが合わさってはじめて、「税金をコントロールできる経営」が可能になります。

節税とは単なる経費計上のテクニックではなく、「経営を継続するための財務戦略」であり、リピーター戦略と同じ発想で構築されるべきものなのです。

まとめ:利益構造ができれば、節税は“出口戦略”になる

本当に手元にお金を残したいなら、節税ばかりを追い求めるのではなく、まずは利益構造そのものを見直すことから始めましょう。

  1. 売上ではなく「利益が出るお客様」を新規開拓すること
  2. 初回取引でお客様の感情を動かし、リピートへとつなげる仕組みをつくること
  3. 顧客数を絞り、経営リソースを集中することで固定費を下げること
  4. その上で、キャッシュが残る形で税金対策を設計すること

この流れを丁寧に整えていけば、あなたの会社には「健全な利益」と「しっかり残る現金」が生まれます。

節税とは、経営の中で最後に行う“出口戦略”に過ぎません。入り口から構造を設計し直すことで、初めて意味を持つのです。

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