税理士が教える「お金が残る会社」に変わる仕組みの作り方

「うちは利益は出てるはずなんだけど、なぜかお金が残らない…」
この相談、中小企業をサポートする中で、何度も耳にします。実はこの悩み、“数字の見え方”と“経営の仕組み”がうまく連動していないことが原因です。
今回は、税理士としての立場から、「お金が残る会社」に共通する“仕組みのつくり方”をご紹介します。
「お金が残らない会社」に共通する4つの特徴
- 売上しか見ていない → 利益率や粗利を見ず、とにかく売上アップばかりを追っている。
- 経費が“使いっぱなし” → 意味のない外注費、不要な広告、測定しない投資にお金が流れている。
- 月次決算をしていない → 年に1回、決算書でしか数字を確認していない。
- 「経営=感覚」になっている → 勘と経験に頼りすぎ、数字が経営判断に活かされていない。
こうした経営では、いくら利益が出ていても手元にお金が残りません。税理士任せ、現場中心、数字に弱い会社では、キャッシュが消えるのは時間の問題です。
お金が残る会社が実践している4つの仕組み
お金を残すためには、経営の“見える化”と“判断の基準”を整える必要があります。
① 数字の仕組み:「見える化」されている
- 月次で損益計算書・資金繰り表を確認
- 3ヶ月〜6ヶ月先までの利益・納税予測を把握
- 社員と共有できる“簡易版の財務指標”を設置
数字が定期的に見える会社では、ムダな支出が減り、意思決定のスピードも向上します。税理士も単なる会計処理ではなく、「未来の数字」を一緒に設計できるパートナーになります。
② 評価の仕組み:「行動」と「お金」が連動している
- 何をすれば給与や報酬が上がるのかが明確になっている
- 売上・利益に直結する行動が日常的に評価されている
- 給与や賞与が「感覚」ではなく「仕組み」で決まる
これにより、社員は「利益を意識して働く」ようになり、会社全体の生産性が上がります。納税に対する理解も深まり、節税の目的が社内で共有されやすくなります。
③ 経費の仕組み:「コストが見える」「予算が守られる」
- 経費には上限があることをルール化
- 支出の目的と期待効果を明文化(例:研修=採用定着率アップ)
- 経費申請フローを自動化またはデジタル化
経費は「支出」ではなく「投資」です。お金が残る会社は、税務上問題のない範囲で、未来に直結する支出を予算内で最大化する設計ができています。
④ 経営判断の仕組み:「社長の仕事」が明確
- 社長は現場から離れ、仕組み設計と数字確認に集中
- 仕組みを管理・改善するのが「本来の社長業」と定義
- 人材や商品に依存せず、構造で利益が出る設計を目指す
これにより、会社は「社長がいなくても利益が出る仕組み」へと進化します。
数字に強い会社=節税にも強くなる
「お金が残らない会社」は、数字に弱い傾向があります。特に多いのが:
- 税金の仕組みを理解していない(納税額の予測ができない)
- 法人・個人の手残りバランスを把握していない
- 売上・利益・キャッシュフローがバラバラに管理されている
逆に、数字に強くなることで、以下のような効果が得られます:
- 月次決算で税金の“先読み”ができる
- キャッシュが不足する時期を事前に把握できる
- 節税策を「いつ・いくら・何に」使うか、計画的に実行できる
数字の「見える化」なくして、節税の精度は高まりません。
経営と税務を一体化することでお金が残る
「経営の仕組み」と「税務の設計」は本来、別物ではありません。
- 月次決算と納税シミュレーションを連動させる
- 利益予測と納税スケジュールをセットで管理
- 節税の意思決定を予算と照らし合わせて判断
こうした一体化により、税金対策が「その場の対応」から「戦略的な仕組み」へと変わります。
また、税理士との連携も変わります。「税理士=過去の数字を処理する人」ではなく、「未来の利益とキャッシュを一緒に考えるパートナー」へ。これが、お金が残る会社の標準です。
まとめ:「仕組み」と「数字」が連動すれば、キャッシュは残る
お金が残る会社には共通点があります:
- 月次決算で数字が常に見えている
- 給与・経費・利益が“仕組み”で回っている
- 税理士と未来の数字を共に設計している
これらを実現することで、売上の浮き沈みに関係なく、手元にお金が残り続ける経営体質が手に入ります。