利益を出すだけではダメ!税金で消える前に“残す仕組み”を作る方法

「売上は増えているのに、なぜか手元にお金が残らない」――これは多くの中小企業経営者が抱える深刻な悩みです。その原因は、単に利益が出ていないからではありません。
実際には、がんばって利益を出していても、そのまま税金でごっそり持っていかれてしまうケースが多いのです。頑張った分だけ税金が増え、キャッシュが残らない。これでは本末転倒です。
この状況を打破するためには、利益の出し方と税金の考え方、そして仕組みの設計そのものを見直す必要があります。今回は、「利益が出てもお金が残らない構造」から抜け出すための実践的なポイントを税理士の視点からご紹介します。
なぜ、がんばったのにお金が残らないのか?
まず大前提として、税金は利益にかかります。逆に言えば、利益を出すとその分、税金が増えるわけです。これを「頑張れば頑張るほど、税金でキャッシュが減る構造」とも言えます。
中小企業では特に、「利益=手元に残るお金」と誤解されやすいですが、実際には以下のような落とし穴があります:
- 設備投資などの支出が利益計算に反映されず、キャッシュが足りない
- 法人税、消費税、住民税など複数の税が決算からタイミングをズラしてやってくる
さらに、「節税=支出を増やすこと」と短絡的に考えてしまい、結果としてキャッシュが先に枯渇するパターンも少なくありません。節税による支出が、利益を抑えたとしても、キャッシュアウトを伴えば意味がありません。つまり、節税とキャッシュフローの管理はセットで考える必要があります。
「利益を残す」ではなく「お金を残す」仕組みを作る
ここで重要なのが、「利益=お金」ではないという考え方です。
残すべきは「利益」よりも「キャッシュ(現金)」です。そのために必要なのが、以下の3ステップです。
ステップ1:利益構造の見直し
まず、今の事業モデルがどの利益構造に該当するのかを確認してください。
一般的には下へ行くほど利益効率が良い事業モデルです。
利益構造 | 特徴 | キャッシュを残すための改善策 |
---|---|---|
仕入販売型 | 粗利率が低く、在庫リスクも高い | 製造販売や請負へ移行しやすくする |
製造販売型 | 設備投資が必要、固定費が高い | 減価償却を活かした節税 |
請負・役務型 | 売上と労働量が直結しがち | 外注や仕組み化で効率化を図る |
会費・サブスク型 | 継続収益でキャッシュ安定 | 利益予測にもとづく継続的な節税 |
このように、利益率が高く、安定収益が見込めるモデルに近づけることで、税金の負担を計算しやすくなります。さらに、粗利率の高い商品やサービスを育てることも重要です。売上に対する粗利率の1%の改善は、キャッシュ残高に大きな影響を与えます。
ステップ2:タイミングコントロール
節税には「タイミング」が命です。利益が確定してから対策しても遅いケースがほとんどです。たとえば、以下のような方法は「利益が確定する前」に仕込むべきです:
- 備品購入(10万円未満の消耗品扱い)
- 決算賞与(条件付きで未払い計上できる)
- 経費の計画化(広告、外注、教育)
- 少額減価償却資産の活用(30万円未満の特例)
これらはすべて「事前設計」があってこそ機能します。節税は“年度末の駆け込み”ではなく、“年度初めの戦略”で9割が決まります。さらに、税金の支払いスケジュール(法人税・消費税・償却資産税など)を早い段階で予測しておくことで、資金繰りを安定させることができます。
ステップ3:「見える化」と「仕組み化」
毎月、社長が会社のお金の流れを把握していますか? もし、「決算が終わるまで利益が分からない」状態なら危険です。
- 毎月の利益を「見える化」
- 節税余地を「先読み」
- 手元キャッシュを「守る仕組み」を構築
これを実現するには、月次決算の導入と、経理の仕組み化が不可欠です。外注でも構いませんが、社長自身が「数字を読める力」を最低限持つことが重要です。決算書の理解はもちろん、資金繰り表も月次レベルで確認できるようにしておくべきです。
また、社内の経費申請や購買ルールも整備しておくことで、無駄な支出や税務リスクを事前に防ぐことができます。「人任せ」ではなく、「仕組みで経営を管理する」意識が不可欠です。
まとめ:節税は「お金を残す仕組み」づくりの一部にすぎない
税金は悪ではありません。納税できるのは「黒字企業の証拠」です。しかし、無駄に払う必要もありません。
大事なのは、
- ムダな税金を払わず、
- 効果的な投資にお金を回し、
- 安定した利益とキャッシュを残す、
という“戦略的なお金の使い方”を実践することです。
そのためには、仕組み・利益構造・節税の3つを連動させた経営が必要です。単に「税金を減らす」ことではなく、「お金を増やす」構造そのものを整えていくことが、中小企業にとって最も重要な節税対策となります。