高収益体質をつくる節税と経費の考え方

「節税のためにお金を使ったのに、なんだか会社が楽にならない」
このように感じている経営者の方は、少なくありません。実は、税金を減らすための支出が、逆に会社の体力を削ってしまっていることがよくあるのです。
本稿では、「節税」と「経費」の使い方を見直し、売上ではなく“利益”をしっかりと残せる高収益体質へと変えていくための視点をお伝えします。
「経費=節税になる」は大きな誤解
多くの社長が「経費を使えば税金が減るから得だ」と考えています。
しかしこれは、「税金は減ったが、お金はもっと減った」という結果になりやすい考え方です。
たとえば、100万円の利益に対し、30万円の税金がかかるとしましょう。節税のために80万円を経費で使えば、税金は24万円減りますが、80万円のキャッシュが出ていきます。結果として、56万円も損をしているのです。
つまり、「税金を減らすために損をしている」状態になっていないか? という視点を常に持つことが重要です。
経費には「消える経費」と「残る経費」がある
節税に使う経費には、大きく分けて2つあります。
消える経費(浪費型)
- 意味のない広告
- 節税目的だけの会食
- とりあえず買った備品
- 必要以上の保険加入
これらは使った瞬間に終わり、将来的な利益には結びつきません。
残る経費(投資型)
- IT化・自動化による生産性向上
- 売上につながる広告や販促
- 教育や研修による社員の成長
- 導入前から成果が見込める設備投資
これらは時間とともに利益やキャッシュを生む可能性があります。「節税をしながら、会社の利益構造を強化する」方向に資金を使っていくことが、高収益体質への第一歩です。
「利益率」で考えるクセを持つ
中小企業の社長が意識すべき数字は、売上ではなく「利益率」です。
例えば、年間売上1億円で利益が100万円の会社と、売上5,000万円で利益が500万円の会社。どちらが良い経営をしているかは明らかです。
つまり、売上を無理に伸ばすよりも、「ムダを省いて利益率を高める」ことの方が、結果としてキャッシュが残る会社になります。
この観点からも、経費の使い方は極めて重要です。支出はすべて「利益率を上げるための投資かどうか?」というフィルターで判断しましょう。
高収益体質をつくる節税思考
高収益体質をつくるための節税戦略とは、「税金を減らすために支出する」のではなく、「利益を確保しつつ、必要最低限の税金に抑える」バランスをとることです。
以下のような思考が求められます:
- 必要な経費は惜しまず使う(ただし見返りのあるもの)
- 節税策はキャッシュが減らないものを優先
- 税額は「経営成績に対する当然の結果」と捉える
- 利益をしっかり出し、その上で税務メリットを活用
具体的に意識したい節税+高収益の取り組み
節税型設備投資(即時償却)
中小企業経営強化税制などを活用し、即時償却できる設備に投資することで、節税と生産性向上を同時に狙えます。
業務改善のIT導入
クラウド会計、RPA、自動発注ツールなど、現場の工数を減らすシステム投資は、短期で回収できる「利益を生む支出」です。
売上単価UPのためのブランディング費用
価格競争に巻き込まれない「高付加価値」な事業構造へシフトするために、デザイン・コピー・動画などへの適切な投資も節税効果と相性が良いです。
社員教育費用(リスキリング)
「優秀な人材を採る」のはコストが高いですが、「今いる社員を育てる」ことは費用対効果が非常に高く、しかも経費として認められるため節税にもなります。
経費を“選ぶ力”が、会社の収益力を決める
「何にいくら使うか」という経費判断は、会社の将来に直結します。
間違った節税=キャッシュ減少・成長の芽を潰す
正しい節税=キャッシュ確保・利益体質強化
この判断力を磨くには、経費を「費用」ではなく「資金配分」と捉えることが重要です。お金をどこに配るかで、会社の未来は変わります。
まとめ:「経費の質」で節税の価値が決まる
節税そのものが目的化すると、経費の“量”ばかりを増やしてしまいがちです。
ですが、経営にとって本当に大切なのは、経費の質です。
・未来の利益につながるか?
・キャッシュを生む構造をつくれるか?
・成長を後押しする使い方か?
これらの視点で支出を選べば、節税しながら利益体質に近づけることができます。
経費を味方につけて、利益とキャッシュが残る“高収益な会社”を一緒に目指していきましょう。