ゴールデン・サークルで見る税金とお金の残し方

「頑張って売上を上げているのに、なぜかお金が残らない」。
これは多くの中小企業経営者に共通する悩みです。そしてその原因の多くは、「順番を間違えていること」にあります。具体的には、WHAT(何をするか)から始めてしまっていることです。
本記事では、サイモン・シネックの提唱する”ゴールデン・サークル”(WHY → HOW → WHAT)を経営と節税に応用し、なぜこの順番が「利益が残る経営」につながるのかを解説します。
ゴールデン・サークルとは?
サークルは3つの層で構成されます:
- WHY(なぜやるのか)
- HOW(どうやってやるのか)
- WHAT(何をやるのか)
多くの企業はWHAT(商品・サービス)やHOW(差別化)ばかりに目が行き、WHY(目的や信念)が曖昧なまま経営を続けています。しかし、人の感情に響き、行動を促し、信頼と利益を生むのはこの”WHY”なのです。
税金と利益の「順番ミス」
経営の現場では、「利益が出た→税金がかかる→節税対策を考える」という流れが一般的です。
これは一見自然に見えますが、実は”WHAT→HOW→WHY”の逆転型であり、場当たり的な対処にすぎません。
ゴールデン・サークルの順で考えれば、
- WHY:この事業で誰を幸せにしたいのか?どんな価値を社会に届けたいのか?
- HOW:その目的を実現するために、どんな仕組み・体制が必要か?
- WHAT:その上で、どんな商品・サービス・価格で提供するか?
という形になり、結果として利益の出し方やお金の使い方が一貫性を持つようになります。その結果、節税も自然に設計できるのです。
WHYから始めた経営が生む節税効果
1. 意味のある経費が増える
WHYに沿った支出は、経費としての要件を満たしやすく、かつブレないため、無駄な出費や税務否認リスクも下がります。
たとえば、「人材育成によって地域に貢献する」というWHYを掲げる企業が、社員研修に投資する場合、それは理念に基づいた明確な経費となり、税務上も認められやすいのです。
2. HOWが仕組みを強くする
HOW(どう実行するか)を意識すると、節税対策も仕組み化できます。たとえば、
- 福利厚生制度を整えることで、社内に税務メリットのある制度が定着
- 決算前に毎年同じ流れで決算対策の判断を行う仕組み
- 掛け捨てで終わらない保険の活用など
節税が属人的ではなく、組織的に行えるようになります。
3. WHATの選定が変わる
WHYから出発すると、提供する商品やサービスの選び方も変わります。利益率が低いけど売れる商品ではなく、信念に基づいた高付加価値のサービスを選ぶようになります。これが、結果として利益の質を高め、税務対策もシンプルにします。
WHYから考える節税設計の例
例:社員を大切にする会社の節税設計
- WHY:社員とその家族を大切にする
- HOW:働きやすさ・健康・成長を支援する制度設計
- WHAT:
- 福利厚生費(食事代補助、健康診断、カウンセリング)
- 教育費(外部研修、資格取得支援)
- 慶弔見舞金制度
これらはすべて節税につながると同時に、会社の価値観を体現する施策です。だからこそ従業員の信頼も得られ、離職率が下がり、生産性も上がる。つまり、節税が単なる節約ではなく、未来への投資に変わるのです。
まとめ:順番がすべてを変える
・WHAT(売上や商品)から考えると、経費が膨らみ、税金も増える
・WHYから考えれば、必要な利益と節税の形が見える
・ゴールデン・サークルの順番が、理念とお金の一貫性を生む
節税は、単なるテクニックではなく、経営理念の延長線上にある戦略です。
WHY → HOW → WHATの順番で設計された経営は、税金というコストさえも、自社の成長のために使いこなすことができます。